
令和4年4月1日に改正育児・介護休業法が施行され、男性が育児休業を取得しやすい環境が整備されました。
県は、男性の育休取得を後押しするため、(将来の)男性育休当事者を対象に、“家事・育児参画の重要性”を学ぶとともに、育休の取得に関する疑問や不安にお答えするセミナーを開催しました。
ここでは、セミナーで紹介された重要なポイントについてご紹介します。ぜひご覧いただき、ご自身の育休取得の参考にしてください。
ー開催概要ー
- 日 時 2022年12月17日(土)10:00~12:00
- 会 場 山形市男女共同参画センター「ファーラ」をメイン会場に、酒田市、寒河江市、東根市、村山市、白鷹町にサテライト会場を設置
- 参加者数 メイン会場42名、サテライト会場25名
◆第1部 講演
「男性育休取得と家事・育児参画で深まる大切な家族との絆」
講師:髙橋 理里子 氏(ミライズ株式会社専務取締役)

1.男性育休と家事・育児参画が必要な理由とは?
・妊産婦の命を守るため
妊産婦の死亡原因の1位は自殺で、産後うつなどとの関連が指摘されています。産後うつは児童虐待につながる恐れもあります。産後うつの発症は出産後2週間がピークです。パパが育休を取ることで、ママの一番大変な時期を一緒に乗り越え、ママとお子さんの命を守ることが大事です。
・家族構成の未来に影響を及ぼすから
第1子の子育てで夫の参画が得られた家庭では第2子以降が生まれている割合が高いです。男性が育休を取って夫婦で協力して子育てをすることが少子化対策にもつながります。
・産後数年間が夫婦関係の未来を創る
女性は出産後、子どもに愛情が傾きます。ママに家事や育児を任せきりだと、夫への愛情は時間が経っても回復せず、熟年離婚にもつながります。産後すぐの時期に子どもを一緒に育て、感情を共有することが重要です。
・高まる「男性育休の波」
近年の調査では、男性新入社員の約8割が「将来子どもが生まれたら育休を取得したい」、女性の学生の9割が「パートナーに育休を取得してほしい」と回答しています。男女とも育児や家事に参画することが当たり前の時代になっています。
2.ところで育児休業制度とは?
・育児休業を取れるのはどんな人?
原則として、1歳になるまでの子どもを育てる男女の従業員です。育児休業は条件さえ満たせば誰でも取得できます。
・育児休業を取るためには?
育児休業開始の1か月前までに勤務先に申し出ましょう。早ければ早いほど良いです。書面で必要事項を会社に申し出てください。勤務先の担当部署などに確認してみましょう。
・どれくらいの期間取れる?
原則として、子どもが満1歳になるまでの間、希望する期間取得できます。企業によっては法律を上回る制度を定めていることもありますので、自分の勤務先で確認しましょう。
・育児休業中は収入がなくなる?
会社の制度によりますが、無給の場合は「育児休業給付金」が支給されます。また、休業中の社会保険料が免除されます。
・会社に制度がないと育児休業を認めてもらえない?
育児休業は、育児・介護休業法で定められており、会社に制度がなくても取得できます。また、会社が申し出を拒むことは禁止されています。
・男性のための新しい育休制度とは?
2022年10月から出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されました。子の出生後8週間以内に最長4週間まで取得可能です。分割して2回取得することも可能です。
※育児休業制度については、コチラのページもご参照ください。
3.育休取得 5つのつまづきポイント
・「育休制度がよく分からない」
「会社で育休制度が整備されていない」「収入を減らしたくない」など、男性が育休を取得しない理由の中には「誤解」があります。社内での育休制度の理解促進が不可欠です。
・「育休を取ったら経済的に困る」
育児休業給付金が支給されますし、社会保険料の免除により、実質手取りの8割が保障されます。一時的に収入が減っても、長期的には保育料が安くなるなどのメリットがあります。職場の担当部署に給与、給付金、賞与などを確認してみましょう。
・「自分のキャリアが不安・・・」
育休は家事・育児に取り組むことで、コミュニケーションやマルチタスクの能力などが上がり、仕事にも役立ちます。自身のブラッシュアップ期間として、多様な視点を身に付けることで長期的にはキャリアにプラスになることもあります。
・「人手不足で組織が回らなくなる・・・」
コロナ禍や災害など、いつ、誰が休んでもおかしくありません。育児休業は、あらゆる休みの中で最も事前に計画が立てられます。好機と捉え、職場内の属人化の排除を進めましょう。
・「不公平感を感じてしまうのでは…」
男性育休は、誰もが柔軟に働ける環境を作る起爆剤です。全員が恩恵を受ける働き方にすることが鍵です。
4.実際に育休で何をすればよいか
・育休中のサポート
産後パパ育休中のサポート例を見ても、赤ちゃんのお世話のほかにも、身の回りの家事や、出生届や児童手当などの手続き、出産祝いへのお返しの準備など、様々あります。「手伝う」のではなく、「共に」家事・育児をやりましょう。
そして最も大事なのは、妻のメンタルサポートです。「大変な時に、夫がそばにいて味方してくれた」という経験がその後の夫婦関係に与える影響は大きいです。
・育児タイムスケジュール
赤ちゃんは2~3時間おきにオムツ交換や授乳があります。また、よく吐き戻しもあり、服が汚れます。ママが睡眠を取れるよう、パパが育休を取って、ママと家事・育児を分担してください。育休は、夫婦が共に子どもを育てていくために、家事や育児のベストな分担を見つけるための大事な時間です。
5.最後に
パパが育休を取得することでママと交代で夜間の授乳をすることが可能になります。ママが7時間の睡眠をしっかりとれると朝日を浴びて散歩をするなどホルモンバランスを回復することができます。これはママを産後うつから救うためにとても大切なことです。そして何よりも日々変化する子どもの成長をそばで見守ることができます。
大切な家族のために育休を取得して家事と育児をママと一緒に楽しみましょう!
◆第2部 ワークショップ
「将来のパパ必見! 育休前-育休中-育休後の準備と家事・育児への参加方法のコツ」
講師:伊藤 麻衣子 氏(合同会社work life shift 代表)

参加者が4つのグループに分かれ、「育休を取得しようとする場合に職場で取り組もうと思ったこと」「育休を取得した場合に家庭で取り組もうと思うこと」を考えてもらいました。
その上で「性別に関わらず、育児休業を取得しやすい職場とはどのような職場か」「仕事と育児を両立できる職場づくりのためには、どのようなことを心がけたら良いか」についても考えてもらいました。
各グループでは、先輩育休取得者の男性4人が自らの経験なども踏まえながら、参加者にアドバイスしました。
グループ1
先輩育休取得者:安孫子勝顕さん(株式会社ジョイン)

【安孫子さんからのお話】
職場では、育休前に業務の申し送り事項をまとめ、休業中の連絡体制を構築しました。家庭では、妻のサポートや、率先して家事に取り組むことが大事です。
育休中でも一時的に就業できる制度もあります。希望する期間に育休を取得するために、シミュレーションをしてみると、取得前・取得中・取得後にやることのイメージがつきやすくなると思います。
【参加者の声】
どうしたら育休の取得率が上がるのかヒントが得たいと思い、参加しました。育休は100か0かではなく、部分育休の選択肢もあることなどが印象に残りました。
グループ2
先輩育休取得者:土屋雅貴さん(山形サンケン株式会社)

【土屋さんからのお話】
妻と話し合い、3か月の育休を取得しました。所属部署の課長から育休の話をしていただいので、取得しやすかったです。日頃から上司とコミュニケーションを取っておくと良いと思います。
現在は育休期間中ですが、仕事をしている方が楽です。慣れない家事や育児で、やらなければいけないことが一気に増えます。焦らずに1つ1つ解決していこうと思います。
【参加者の声】
職場での上司からの声がけが素晴らしいと思いました。自分の企業もそのような環境にしたいです。育休は楽しいことも多いはずなので、夫婦で家事・育児をうまく分担したいです。
グループ3
先輩育休取得者:森航輔さん(日本海総合病院)

【森さんからのお話】
育休取得の希望を職場に早めに伝えることを意識しました。早く伝えることで業務量や人員の調整もしやすくなると思います。
今は第2子で育休中で、毎朝6時に起きて家事・育児や、長男の保育園への送迎などを行っています。家事は夫婦でその時にできる方がやり、やってもらったら「ありがとう」と伝えるようにしています。
【参加者の声】
森さんは部署内で初めての男性育休取得者だったとのことで、職場で意識することなどのお話しが印象に残りました。育休中の1日のスケジュールも参考になりました。
グループ4
先輩育休取得者:横澤遼さん(山形県職員)

【横澤さんからのお話】
職場では、育休取得1か月前と直前の2回、自分の担当業務の引き継ぎを同じ係の職員にできたことが良かったです。
育休中は自分の時間が少なかったので、朝5時に起き、子どもが起きるまでの時間に読書などをしました。その生活スタイルは育休後も続いており、朝の時間を有効活用できています。育休で子どもと1か月間、一緒に過ごすことができ、夫婦の信頼関係や協力体制も構築できて良かったです。
【参加者の声】
職場での仕事の引き継ぎについてアドバイスをいただけて良かったです。横澤さんの「育休を取得して後悔したことはない」との言葉が印象に残りました。
◆参加者アンケートの結果
〇第1部の感想
- 制度的に知らないことが多く、勉強になった。
- 法改正により男性育休の環境が整っていることに驚いた。積極的に育児を行う気持ちになった。
- 育休取得にあたり、収入面での心配があったが、今回の講演を聞いて安心した。
- 育児を共有して幸福感を得るだけでなく、妻の命を守る制度だと分かった。
- 男性の育休取得が広く理解されることで、職場の雰囲気も変わると思う。
〇第2部の感想
- 育休を取得した方の実体験を聞くことができ、取得を考える良いきっかけとなった。
- 先輩の皆さんも自分と同じような不安を抱え、ハードルを克服していったことが分かった。
- 想像以上に育児は大変だが、得られるものも多いと感じた。
- 半年間や1年間など長期で取得した方からも話を聞いてみたい。
〇家事・育児の男女共同参画の必要性を感じましたか?
⇒「感じた」との回答が100%!
〇新たに取り組むべき家事・育児について気づきが得られましたか?
⇒「得られた」との回答が98%!
〇男性育休取得推進のため、行政に対して希望すること
- 今回のようなセミナーが今後もあれば良いと思う。
- 夫婦のコミュニケーションスキルなども考える機会があると嬉しい。
- 会社側の理解については、すでに育児を終えているベテラン世代への情報提供もお願いしたい。
- 企業の理解を得るために、まずは行政が積極的な取得を。職員の取得促進に力を入れてほしい。
県では、今後も男性育休当事者となる方を対象としたセミナーを開催してまいります。
セミナーに関する情報はこのサイトでご案内いたしますので、参加についてご検討ください。