男性育休準備セミナーを開催しました!ポイントをまとめてご紹介します!

令和4年4月1日に改正育児・介護休業法が施行され、男性が育児休業を取得しやすい環境が整備されました。

県は、男性の育休取得を後押しするため、(将来の)男性育休当事者を対象に、“家事・育児参画の重要性”を学ぶとともに、育休の取得に関する疑問や不安にお答えするセミナーを開催しました。

ここでは、セミナーで紹介された重要なポイントについてご紹介します。ぜひご覧いただき、ご自身の育休取得の参考にしてください。

ー令和5年度開催概要ー

  • 日  時 2023年11月11日(土)9:30~11:40
  • 会  場 オンライン会議ツール「zoom」によるオンライン開催(オンデマンド配信あり)

◆第1部 講演

「男性育休は“共育て”の出発点!」
~あなたと、あなたの大切な人の笑顔のために~

講師:髙橋 理里子 氏(ミライズ株式会社専務取締役)

1.男性育児休業取得の現状

・山形県の男性育休取得率21.6%(2022年)

 日本の男性の育休取得率は2018年頃から上昇してきています。山形県の2022年の取得率は21.6%で、全国平均17.13%を上回っています。県内企業の理解が進み、当事者の意識の高まりも見られます。ただ、政府が掲げている「2025年までに50%」「2030年までに85%」の目標にはまだまだ遠い状況です。国外ではノルウェーの取得率が89%に上ります。

・男性の育休取得期間は「5日以下」が最も多い

 男性の育休取得期間はまだまだ短い傾向にあります。山形県内の統計でも「5日以下」の割合が最も多く、1か月未満が半数以上を占めています。より長期間取得できるようになることが望ましいです。

・課題の認識に男女で違いがある

 男性が育休取得する上での課題についての認識は、男女間で違いがあります。実は女性の方が「夫が育休を取ることで経済的に苦しくなるのではないか、夫のキャリア形成に不利になるのではないか」と懸念している人が多いのです。勤務している会社の制度や育児休業給付金などの情報を確認して、夫婦で話し合っておくことが大事です。

2.男性育休が必要な理由とは?

・ママと赤ちゃんの命を守るため

 妊産婦の死亡原因の1位は自殺で、産後うつなどとの関連が指摘されています。産後うつは児童虐待につながる恐れもあります。産後うつの発症は出産後2週間がピークです。パパが育休を取ることで、ママの睡眠時間を確保することなどが可能になり、産後うつの予防につながります。

・産後数年間が夫婦関係の未来を作る

 女性は出産直後、子どもに愛情が傾きます。産後すぐの時期に夫と一緒に子育てして感情を共有するとその後に夫への愛情が回復しますが、女性だけが子育てを頑張った状況だと夫への愛情は低迷したままになる傾向にあります。

・家族構成の未来に影響を与える

 厚労省の調査によると、パパの休日の家事育児の時間が長い家庭ほど第2子以降が生まれている割合が高くなっています。第1子の時の孤独な子育てがママのトラウマになってしまうことを覚えておいてください。

・実は「仕事のできる人」になれる

 育休によって普段の仕事ではできない未知の経験をしたり、探索行動を取ったりすることは、イノベーションの源泉となり、より仕事の幅を広げ、キャリアアップにもつながります

3.ところで育児休業制度とは?

・育児休業を取れるのはどんな人?

 原則として、1歳になるまでの子どもを育てる男女の従業員です。育児休業は条件さえ満たせば誰でも取得できます。ママが専業主婦でも育休中でもパパも取得できます。

・育児休業を取るためには?

 育児休業開始の1か月前までに勤務先に申し出ましょう。赤ちゃんの生年月日(産前の場合は出産予定日)や育児休業開始・終了予定日などの必要事項を書面で会社に申し出てください。勤務先の担当部署などに確認してみましょう。

・どれくらいの期間取れる?

  原則として、子どもが満1歳になるまでの間、希望する期間取得できます。企業によっては法律を上回る制度を定めていることもありますので、自分の勤務先で確認しましょう。

・育児休業中は収入がなくなる?

 会社の制度によりますが、無給の場合は雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。また、休業中の社会保険料が免除されることから、実質、賃金の手取りの8割が支給されます。将来もらえる年金も減りません

・育休取得は本人だけでなく、職場にも恩恵がある

 災害や感染症と異なり、育休は10か月前から準備ができます。企業にとっては、誰が休んでも仕事が回る、誰もが柔軟に働ける職場づくりの絶好の機会となり、採用や定着にも好影響をもたらします。また、育休を取得すると企業は助成金の対象にもなります。

4.育休準備と育休期間の過ごし方は?

・職場には早めの連絡、引継ぎを

 妻の妊娠や育休を取る意向は職場に早めに連絡し、引継ぎを開始してください。出産予定日の半年前には、育休取得の意向や期間を上司や同僚に伝えてください。3か月前になったら、他部署や担当のお客様にも伝え、同僚に引継ぎリストを共有してください。感謝の気持ちを伝えることも大切です。しっかり引継ぐ業務は一緒に行いましょう。

・家事育児の分担でママの睡眠時間を確保

 生後4週間くらいまでの赤ちゃんは頻繁に授乳やオムツ交換があります。また、赤ちゃんはよく吐き戻してしまうので着替えも必要です。そのほかに家事もあるため、ママ1人だとママの睡眠時間がなくなってしまいます。一番大変な時期にパパが育休を取り、夜の授乳もママと交代でやるなど、どう分担するか夫婦で話し合ってほしいと思います。

・家事のスキルアップや妻のメンタルサポートが大事

 赤ちゃんのお世話はもちろん、様々な事務手続きや兄姉のお世話など様々なサポートがあります。妊娠が分かった時点から約10か月間ありますので、掃除や料理など身の回りの家事も少しずつスキルアップしておきましょう。そして一番大事なのは、妻のメンタルサポートです。「大変な時に夫がそばにいて味方してくれた」という経験がその後の夫婦関係に与える影響は大きいです。祖父母や家事代行サービスではカバーできません。

・充実した育休生活のために

 まずは赤ちゃんとたくさん触れ合ってください。肌の触れ合いでオキシトシンという幸せホルモンが出ます。また、夜の対応を分担するなどして夫婦とも睡眠時間を確保してください。最近はパパの産後うつも増えているので、まじめなパパほど気を付けてください。時には夫婦それぞれが1人で息抜きする時間も大事にしましょう。

・法改正により柔軟な育休取得が可能に

 法改正により、産後8週間までに通常の育休以外に取得できる「産後パパ育休」が設けられました。育休も分割して2回取得できます。また、保育所に入所できないなどの事情がある場合は1歳以降での育休も可能です。ママの産後うつ回避のため産後4週間取得したり、妻の職場復帰のタイミングで取得したり、家庭の状況に合わせて取得時期を話し合っておきましょう

※育児休業制度については、コチラのページもご参照ください。

5.最後に

 出産はライフステージや家族の大きな変化です。「これまで通り」で本当に大丈夫か立ち止まって考えましょう。育休を取得することで日々変化する子どもの成長をそばで見守ることができます。大切な家族のために育休を取得して家事と育児をママと一緒に楽しみましょう!

◆第2部 パネルディスカッション&グループトーク

「教えて先輩パパ!育休中、みんなどうしてる?」

講師:伊藤 麻衣子 氏(合同会社work life shift 代表)

 県内の様々な業種に勤務する先輩育休取得者5名によるパネルディスカッションを実施しました。育休を取得した思いや、育休中の家事・育児での苦労や子どもと一緒に過ごせる喜び、育休を経た自身の変化、将来のパパへのメッセージなどを語っていただきました。

先輩育休取得者:大泉夏幹さん(斎藤マシン工業株式会社)

 機械加工の仕事をしています。第1子が生まれた後、育休を3週間取得しました。姉2人の出産時に大変そうな状況を見ていたので、自分の子どもができたら育休を取得しようと思っていました。職場には出産の半年前に伝えており、様々な人にカバーしていただきました。前もって伝えておくことが大事です。
 育休中は妻と協力して育児をして、24時間子どもから目を離せない状況は言葉では表せないほど大変だと身をもって感じました。女性の産後のメンタルや体力についてもっと調べておけばよかったです。育休は子どもと過ごせる貴重な時間で、子どもにも良いことだと思います。

先輩育休取得者:小野寺拓さん(社会福祉法人恵泉会)

 特別養護老人ホームで介護員をしています。育休は第1子の時に10日間、第2子の時に46日間取得しました。先輩から取得できることを聞いていましたし、第2子の時は、第1子のお世話をする必要があったので取得しました。
 大好きなママと離れる第1子が心配でしたが、育休中に2人で暮らしたことで、今まで見えなかった我が子の一面を見ることができ、信頼関係を築くことができました。家族とのコミュニケーションも増えて家庭が明るくなりました。我が子との時間はお金には換えられない大切なものです。

先輩育休取得者:柏倉祐介さん(丸七建設株式会社)

 建築工事や土木工事の営業を担当しています。子ども3人が生まれた時にいずれも育休を取得しました。第3子の時は、お姉ちゃん2人に「ママの入院中もパパと頑張ろうね」と伝えたら、泣いたりせずに頑張ってくれました。子育ては家族一丸でやっていくものと感じました。
 また、育休によって家事の分担が定着し、仕事と家庭の両立の仕方が明確になりました。職場では、普段から上司や仲の良い先輩と育児に関してコミュニケーションを取っておくと育休を取得する時に快く受け入れてもらえると思います。また、子どもの行事や急な発熱の時も休みを取りやすくなるのではないでしょうか。

先輩育休取得者:佐藤大介さん(山形県)

 仕事では、企業のワーク・ライフ・バランス推進などに取り組んでいます。第1子が生まれてすぐに3か月間の育休を取得しました。育休を取得した先輩が同じ部署にいましたし、同期の職員からの後押しもありました。
 育休の初めの頃はかなり大変で、事前に家事をひと通り1人でやってみるなどの準備が必要だと感じました。食器洗い乾燥機や電気調理器などのハイテク家電にも助けられました。
 育休後は仕事と家庭の両立意識が高まり、業務の効率や家事育児スキルが上がったように感じます。大変な時期を家族で乗り越えられたのはとても良い経験になりました。

先輩育休取得者:森航輔さん(日本海総合病院)

 理学療法士として勤務しています。第1子の時に2か月、第2子の時に3か月の育休を取得しました。第1子の時はコロナ禍で里帰り出産ができず、夫婦ともに両親が近くに住んでいないので、頼れる人が近くにいない状況でした。第2子の時は子育て中の友人が増えました。
 育休中、初めは子どもがすぐ泣いて起きてしまいましたが、徐々に寝てくれるようになり、夫婦で交代しながら夜のミルクをあげました。夜に十分に眠れなくても日中に休めるし、育児だけに集中できるので、仕事をしている時よりも気持ちに余裕がありました。育休は人生にもプラスになると思います。周りがどう思うかよりも自分がどうしたいかが大事です。

【グループトークにおける参加者の声】
・子どもとの時間はお金に換えられないと感じ、取得したい気持ちが強くなった。
・セミナーの内容を上司とも共有し、育休取得について相談してみたい。
・離乳食が始まる生後5か月くらいのタイミングで育休を取得することも考えたい。

◆参加者アンケートの結果

 〇感想や印象に残ったことを教えてください。

  • 出産後すぐからの育児の大切さを実感したので、積極的に育児をしたいです。
  • 育休取得者の貴重な体験談を聞くことができて、育休取得に夫が前向きになってくれました。
  • 男性が育休を取得するのは、産後のママをケアすることの重要性が非常に高いと感じました。
  • 育休を取るタイミングや、家事・育児の分担について、将来パパになった際は 参考にしたいです。
  • 男性の育休取得は一般的になってきたものの、より期間を長く取得するには社会の意識を変えていく必要があると感じました。

 〇家事・育児の男女共同参画の必要性を感じましたか?

  ⇒「感じた」との回答が100%!

 〇新たに取り組むべき家事・育児について気づきが得られましたか?

  ⇒「得られた」との回答が100%!

 〇男性育休取得推進のため、行政に対して希望すること

  • 行政が育休取得を推進をしており、実際に取得しようとしたときの反応は、数年前と比べても着実に進んでいると感じます。
  • 今回のようなセミナーの定期的な開催や、必要な申請などのセミナーも開催して欲しいです。
  • こういったセミナーを管理職の研修カリキュラムなどに組み込んでいくのはいかがでしょうか。
  • 育休を取りたいと思っても、代理の方が見つからないと取得できません。環境整備が進めば、より取りやすくなると感じます。

県では、今後も男性育休当事者となる方を対象としたセミナーを開催してまいります。
セミナーに関する情報はこのサイトでご案内いたしますので、参加についてご検討ください。