住職 小野 卓也 さん
住職で子育て?
~今どきのワークライフバランス~
平成25年9月18日(水)上山市で、長井市の曹洞宗洞松寺の住職、小野卓也さんによる講演会を開催致しました。小野住職には、今年の4月に「自分磨き」と題した講演会をお願いしたばかりでしたが、今回の講演会では、自ら実践されているイクメンエピソードを交えながら、今どきのワークライフバランスについて御講演頂きました。
小野住職は、現在茨城に単身赴任されている奥様を支え、平日はご家族の協力のもと主夫として3人のお子さんを育てていらっしゃいます。結婚当初は茨城に居住し、奥様をサポートしながら、山形のご実家に通職(居住していない通いの住職という意味)されていたという経緯があり、現在に至っているそうです。当初から固定観念にとらわれず、出来る人がやるという柔軟な考えで歩んでこられた過程に、家族の色々な在り方を考えさせられます。
修行中に掃除や食事作りなどの作務を叩き込まれている若い和尚さんは、イクメンさんが多いという興味深いお話も聞くことができました。和尚さん達が集まると、育児の話題になることも度々とか。
育ち盛りの3人のお子さんの子育て真っ最中と言えば、育児ストレスはつきもの。やはり住職さんも同じのようです。小野住職の育児ストレス解消法を教えて頂きました。
- あえてまわりに迷惑をかける(頼めるものは誰にでも頼む)
- いい加減は良い加減(完璧を目指すとストレスが…。目標を極めて低く設定する)
- 切り替える(クヨクヨ迷わない、すぐ忘れる)
子供がおねしょをしてしまった時や、ティッシュを一緒に洗濯してしまった時も、くよくよせずすぐに頭を切り替えます!というエピソードに、会場から笑いも。普段、家事、育児をしっかりこなしているご様子がうかがえます。
育児は思い通りには決して行かず、完成がない。自分自身が肯定されること、否定されることどちらも人間形成には必要であり、それこそ「修行」であると住職はおっしゃいます。
また、育児に関わる中で、「子供が喜んでいて自分も嬉しい」という感覚は、「人の幸せを自分の幸せとする」という菩薩の心を育む事と同じ。これは会社などでの対人関係にも応用でき、育児休業をとりたいという社員に会社側は、人間として一回り大きくなるチャンスを与えよう、子供に鍛えられてこい!という気持ちで育休に送り出して欲しいとおっしゃっていました。
日本はまだまだ余暇が短く、家族が一緒に過ごす時間が短いという現実があるが、ひと昔前とは仕事や家庭に対する価値観が大きく変化している。男女の役割は自由であり、固定的な観念は現代にそぐわない。男性はこうあるべきという先入観が、男性の育児参加を阻害するという現実もある。
固定観念にとらわれず、その時の家庭に必要な関わりを実現していらっしゃる小野住職、それぞれの家庭に最適なワークライフバランスがあり、それを意識することが大切であり、社会全体でも意識改革が必要なのだと考えさせられます。
講演終了後、会場からは活発に質問が投げかけられ、父と母の関わりのバランスについての質問に対しては、「子供に圧力がかかりすぎないよう、どちらかが怒っていたら、もう片方が追い打ちをかけることはしません。しかし命に関わることはしつこく言います。」などという秘訣も教えて下さいました。
おだやかな口調で、御自身の育児経験から紡ぎだされる言葉は、どれも参考になることばかりでした。結婚当初から、夫婦の役割分担がしっかりされていたことを羨ましく思いながら、家族のその時の状況に合わせ、自身のワークライフバランスを具体的に考える機会を設けていくことが必要なのだと実感した講演会となりました。